産後鬱になった私の話

このページでは、私が寝ない子育児中、産後鬱になった(病院には行っていませんが)時の体験談です。

産後鬱になるなんて思っていなかった私

出産する前は、自分がこんな鬱っぽくなるなんて、本当にこれっぽっちも思っていませんでした。
勉強し国立大に入り、卒業後は、終電で帰るような会社に勤めていました。

「ふん。育児なんて、今までの苦労に比べればへっちゃら~。それにかわいい子どものお世話でしょ~? 苦痛なわけない!」

出産前は、そんな考えを持っていました。
でも、実際には、もうぶっ倒れそう。
今にもぶちキレそうな毎日なんです。

「こんな風になるのは、自分が未熟すぎるの? 母性が無いの?」

違います。

おかしくもなるはずなんです。
寝ない赤ちゃんを育てていれば、鬱にもなるはずなんです。

考えてみれば、子ども時代~学生時代~社会人時代において、今までこれほどのストレスを抱えたことはなかった。
学生の頃は、勉強という「ストレス」がありましたが、それはほぼ期間限定。極限まで眠くなれば眠れるし、食事だってほぼ母が用意してくれる。そして何より大層な責任も負っていない。
社会人時代もそうです。
忙しい会社に勤めていましたが、それでもやはり自由な時間はちょこちょこあった。
もちろん就業中に、好きな時間に自由にご飯を食べていたわけじゃありません。忙しければなかなかその時間をとることも難しい。
でも、ちょっと仕事配分を調整すれば、10分休憩してコンビニへ行って好きなおにぎりを選ぶことだって出来る。ましてや、トイレなんて我慢することもあまりなかった。
睡眠時間だって、少ないものの、誰にも邪魔されず数時間はグッと眠ることが出来た。
多分、今の二、三十代のママは、多かれ少なかれそういった「自由な」生活を今まで送ってきたのではないでしょうか。

眠れないという極限状態での育児

でも、寝ない赤ちゃんを育てている今は…。
毎日の睡眠時間は多くても3時間。しかも不規則に細切れ。
下手すれば徹夜が続く。そればかりかトイレにも行けないんです。自分の意思で。
(ま、行けばいいんですけれど、そのころは、一緒にトイレに入るという”諦め”が無かった。どうしても、”寝かしつけてから、自分一人で”という意識があったのです)

綺麗にしていた部屋は、今やホコリだらけ。廊下を歩けばたっぷり足に塵が付く。
自分の座った周りには山のような洗濯物。
流しは汚れ物がたっぷりで、使える食器はあと僅か。
こんな状態なんです。
私には、それはまるで、何か大きくて重い鎖を、両手、両足、それどころか頭の上にさえ乗っけて、24時間生活しているような感じにさえ思えました。

実はお風呂も入りませんでした。
いや、文字通り、入る「気力」が全くありませんでした。
最長で1週間は入らなかったと思います。

お風呂に入る、シャワーを浴びるのは、意外と疲れます。

まずシャツのボタンを外して…。
服を脱いで…。
その服をカゴに入れて…。
シャワーの蛇口をひねって…。
髪を洗って…。
あ、あと髪を乾かさないと…。

普段ならなんともないその行為が、異常なほどに疲れる行為だと思えたのです。
今、自分は、人生で味わったことのないほどドロドロに疲れ切っている。なのに、これ以上疲れるような行為(シャワーを浴びるという行為)なんて絶対イヤ…、という気持ちだったのです。
だから、やっとの思いで赤ちゃんを寝かしけたその後も、汗まみれの体のまま、へたっと床に座り込んでぼーっとしていました。
これも、鬱の症状の一種なのかもしれませんね。

話は変わりますが、ウチの母(昭和一桁産まれ)は、戦争体験者です。
芋のつるさえ食べて、何日も飢えと闘ったこともあるそうです。
比べてはいけないのはわかりますが、そんなツワモノに私ごとき生命の危機にさらされたこともない人間では、 やはり違うのかも知れません。

「眠らせない」「眠れない」のは、拷問と同じ

また、「眠らせない」というのは、とある国の拷問でもあるそうです。
睡眠不足で、幻覚を見ることもあるそうです。
そういえば何日か眠らないでいると精神に異常を来すとも聞きました。

そうなんです。
眠れないというのは、拷問みたい、ではなく、拷問なんです。
眠れないというのは、拷問に匹敵するくらい辛いことなんですよね。
寝ない赤ちゃんを育てているママは、そいういう状態に置かれているといってもいいと思うのです。

時々、激務のサラリーマンが過労死してしまうという悲しいニュースを耳にすることがあります。
周りのいる他人は、「そんなに辛い仕事を何故続けるのだろう? 退職すればいいのに」と首を傾げるでしょう。
しかし当の本人には、あまりに激務過ぎて正常な判断が出来ない。
それに、そこまで働いてしまうかたは、きっと責任感が強く、仕事を放り出したり手を抜いたりすることが出来なかっただろうし、相談できる友人も身近にいなかったのだと思います。

子育て中に鬱状態になってしまうママには、そういった側面が多々あるのだと思うのです。

産後鬱の私の使命は「我が子を寝かせること」

あの頃の私は、赤ちゃんのお世話というのは、

「いかにしてこの子を抱かずにいて、ベッドで寝かせるか」

ということでした。

『なんで、うちの子は寝ないのだろう? なんで、抱っこしていないと泣くの?』
『”寝る子は育つ”っていうくらいだから、もしかしてこの子はちゃんと育たない?』
『私の育てかた、間違っている? 普通寝るよね? この子、おかしい? おかしいよ絶対!』

一日中、考えるのはそんなことばかり。
「寝ろ」「寝てよ」「寝てくれっ」「寝てくださいーっ」
当時の私は、ただ寝かせることだけに集中して、それ以外に出来ることを何一つ考えることが出来ませんでした。
色々、工夫できることもあったのに…。



誰にも会いたくない

友達にも家に来て欲しくない

誰かに家に来てもらうことも嫌だと思いました。
大学時代の友人が出産祝いに来ると申し出がありましたが、私は断りました。
いや、正確にはその誘いを無視しました。
断る元気も無かったのです。
誰にも会いたくなかったのです。
自分が寝る時間もない。くたくたに疲れ、寝ておらず、お風呂も入れず、汗まみれ埃まみれ。なんだか私、吐き戻しの母乳の臭いや洗っていない髪の臭いがする。
自分のための最低限のケアも出来ていない。なのに、気楽にしたいことをしたいときにしながら過ごしてる人(被害妄想ですよね)が心地よく過ごしてもらうために、このボロボロの体をむち打って床を拭いたり掃除機をかけたりするなんて、そんなことしたくもないと思いました。
おまけに、いつも以上に部屋は荒れ放題。こんな汚れきった部屋で悲惨な顔をしながら育児している自分の様子を、久しぶりに会う友人に見せたくないと思いました。



産後鬱の時に抱いた「どす黒い気持ち」

また、そのころのわたしは、自分の心のなかに『どす黒い気持ち』を抱えていました。

『どす黒い気持ち』って?
えっとね。
どんなことを考えていたかというと…。

「向かいに10階立てのマンションが見える…。あのてっぺんから飛び降りたら、私とこの子は死ぬかな…。どうなるんだろうな…。そうなったらわたしは育児をしなくて済むな…」
「この子を産んだのは間違いだったのかな。わたしはママになってはいけなかったのかな」
「もう。泣くなっ! うるさいっ! どれだけ私を苦しめれば済むのよ? これ以上眠れなかったら私死んじゃう。命をかけて産んで、なのに、私、自分が産んだ子に殺されかけてる!(今思うと笑い話ですが、当時は真剣に思ってました)」
「防音の部屋でもあったら、そこに入れておけるのに…。防音の部屋。欲しいなぁ」
「こんなんじゃ、育児どころか、過労死してしまう! 過労死だよ? 育児で過労死ってなんなの?」
「かわいい赤ちゃんを目の前にして、普通は幸せで一杯だろうに、私はなんでこんな悲惨な状態なんだろう? 最低だ。なんてかわいそうな、私!!」

何回も何回も何回も何回も考えていました。
我が子に対して、「愛しい」「かわいい」という気持ちよりも、「怖い」という気持ちを持っていたこともありました。
…最低でしょう?
でも、これは本当に思ったことです。

育児雑誌や、育児ブログには、ほとんど「明るい育児ネタ」ばかりです。
育児雑誌に『どす黒いネタ』ばっかり載せていたらイメージ悪すぎ! 売れませんよね。
育児ブログだってネットに公開している以上、ある程度”見栄”はって書いてることも多いですしね…。

そんな明るい育児ネタを読んでは、

「私だけだ…。こんなこと考えてるの。母親失格だね…」

と落ち込む毎日。
もちろん、こんな『どす黒い気持ち』は、あまりにも黒すぎて、夫にも実母にも言えませんでした。誰にも相談もできず、ずっと心の奥底にしまっていました。

でもね。
最近、すこ~し分かってきました。
こういうどす黒い気持ち、程度の差こそあれ、みんな感じたりしてきたんだと思うんです。言わないだけで…。表に出さないだけで…。

で、それをちょこっとずつ、乗り越えていって、親子ともども成長していくんだと思います。

『どす黒い気持ち』を持つことは、異常でもなんでもない。
大事なのは、自分のなかのそれを認めちゃうこと。そして、それをいかに解消するかを手探りしていく気持ち。
そんな風に思ったりするわけです。

私の場合、そういう「どす黒い気持ち」は、赤ちゃんの月齢があがるにつれ、薄くなっていきました。
出産後のホルモンのバランスも落ち着き、寝ない生活にも体が慣れてきたからでしょうか。

私の友達に、双子ちゃんのママがいます。
本当に素敵な、優しいママです。
でも、彼女はぽつりと言いました。
「私ね。ふたごだったから、育児中は赤ちゃんが交代交代に泣いて、寝ないの。本当に徹夜ばっかりだったの…。辛くてね。本当に寝たくて寝たくて仕方なくてね。今考えれば本当に恐ろしくてたまらないけれど、”もしこの子達に私が何かしでかして…、そして警察につかまったら…、そしたら私、牢の中で眠れるな”って思ったことがあるの…」 と。

出産前の私なら、「何をひどいことを」と言うでしょう。
でも、今の私は、彼女の気持ちが分かります。

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